自然発火.消火の理論.消火剤の解説

~乙種第4類危険物取扱者試験の自然発火・消火の理論・消火剤~

乙種第4類・危険物取扱者試験項目の自然発火、消火の理論、消火剤について解説しています。

自然発火

物質が空気中で常温において自然に発熱し、その熱が長期間蓄積されて、ついに発火点に達し燃焼をおこすに至る現象を自然発火という。
動植物油は非常に酸素と結合しやすいため、酸化反応を起こし発熱しやすい。したがって放熱が盛んに行われる場合は温度も上昇しないが、放熱しにくい場合、例えば油のしみたボロ布を堆積しているときなどは、温度が上昇し熱が蓄積され、ついに発火に至る。
セルロイドの自然発火も、自己分解による反応熱発生のため発火を起こすのであって、特に品質の悪いセルロイド製品にはこの傾向が著しい。
自然発火の機構としては、次のような種類が考えられる。
・分解熱による発熱(セルロイド、ニトルセルロースなど)
酸化熱による発熱(乾性油、原綿、石炭、ゴム粉など)
・吸着熱による発熱(活性炭、木炭粉末など)
・微生物による発熱(たい肥、ごみなど)
・その他による発熱

消火の理論

従来、消火の目的は燃焼の三要素、すなわち可燃物、酸素供給源及び点火源のうちいずれか一つを取り去ることにより、達成されると考えられてきたが、最近では、連鎖反応という要素を加えた燃焼理論が考えられるようになり、この連鎖反応を断ち切ると働き(負触媒作用)が消火の手段に数えられるようになった。
消火の三要素

(1)可燃物の除去(除去消火法)
燃焼の一要素である可燃物を取り去って消火する方法である。

例えば、ガスの元栓をしめればガスの供給が断たれ可燃物は完全に除去されて燃焼は止まる。油田火災に爆薬を用いて消火するのは、爆風により可燃性蒸気が吹き飛ばされることが主な理由である。また、ろうそくの火に息を吹きかけて消すのも主にこの理由による。

(2)酸素供給の遮断(窒息消火法)
燃焼の一要素である酸素の供給
を断つことによって消火しようとする方法である。一般に、酸素は空気から供給される場合が多いから、これの供給を断てば当然燃焼は継続しなあ。このようにして消火するのが窒息消火法である。
空気中の酸素量約21%を約14%~15%以下にすれば、一般に燃焼は継続しなくなる。逆に、酸素濃度が高くなれば、燃焼速度は速くなり、また燃焼温度は高くなる。
不燃性の泡で燃焼物をおおう方法
燃焼物を空気又は二酸化炭素などを含む泡によって空気との接触を断って消火する方法である。
二酸化炭素(炭酸ガス)で燃焼物をおおう方法
③固体で燃焼物をおおう方法
燃焼物を固体でおおい、窒息消火する方法である。アルコールランプの蓋をしたり、土、砂、ぬれ布団などで燃焼物をおおうのがこれにあたる。

(3)物体の冷却(冷却消火法)
燃焼の一要素である熱源から熱を奪い、燃焼物を発火点(着火温度)以下に下げる
ことによって消火する方法である。

(4)燃焼継続の遮断(負触媒消火法)
燃焼の連鎖反応のにない手となる活性な原子や原子団を、不活性な物質に変えることによって連鎖反応は断ち切られ、燃焼は抑制される。これを負触媒作用又は抑制作用
といい、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素にはこの作用があり、これらの化合物を消火剤として一般に利用している。

~消火剤~

(1)
水が消火剤としてよく使用されているのは、不燃性で、比熱、気化熱が非常に大きいために冷却効果がよく、またどこにでも豊富にあって経済的であるなど、消火剤としての優れた特性をもっているからである。また霧状の水は、電気の伝導性もきわめて小さくなるので、棒状注水では感電の恐れのある電気設備に対しても使用できる利点がある。

(2)強化液
水の消火効果を強化するために開発されたもので、水に炭酸カリウムK2CO3などを約40~50%溶かした水溶液である。
この水溶液の凝固点は-20℃以下であるから、寒冷地では不凍液として適している。
強化液を噴霧状に放射すると、窒息作用と負触媒作用により油火災に、また電気火災にも適する。この水溶液はpH値が約12と強アルカリ性であるため、人体に付着すると腐食などの障害を起こす危険性があるので注意しなければならない。

(3)
一般に油火災に棒状注水が不適当であるのは、油類が水と混合せず、かつ、水よりも軽いためである。したがって、油類よりも軽い物に着眼し開発されたものが泡消火剤である。
すなわち、泡とは液体の薄い膜で気体を包んだ粒子の集合体で、一般に空気、又は二酸化炭素と水膜でできている。
化学泡(ケミカル・フォーム)
化学泡は、反応によって生成する二酸化炭素を、水酸化アルミニウムて泡安定剤の薄い膜で包み泡を形成する。
泡の性質に影響を与える最も大きな要素は、消火器を作動するときの温度で、化学反応速度は高温では活発であるが低温では低下する。したがって、消火器の薬液が低温度になるおそれのある場所への設置については十分な注意が必要である。
空気泡(エア・フォーム)
空気泡は別名、機械泡(メカニカル・フォーム)とも呼ばれ、化学泡以外の泡で泡基剤に安定剤などを添加した泡薬剤を、水又は海水と一定濃度に混合し、空気又は不活性気体を機械的に混合してつくられる泡である。現在、一般にたん白泡が利用されている。
(a)たん白泡
たん白泡薬剤は、たん白質を加水分解したものが主成分で、これに第一鉄塩を反応させて泡の耐熱性及び安定性の向上をはかっている。
(b)合成界面活性剤泡
合成界面活性剤が主成分で、さらに泡の安定剤や粘度向上剤を添加する。成分によって低膨張型と高膨張型とに分かれるが、軟水、硬水はもちろん海水にも使用できることが必須条件である。
(c)水溶性液体用泡(耐アルコール泡)
一般に泡消火剤はアルコールなどの水溶性液体に使用すると泡が破壊されて窒息効果が期待できないので、水溶性液体用泡剤(耐アルコール泡又はアルコフォーム)が開発市販されている
が、現在はまだ法令による規格は定められていない。

(4)ハロゲン化物消火剤
ハロゲン化物消火剤ハロゲン化物消火剤とは、ハロゲン元素と呼ばれるフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)を含むメタン系炭化水素をいい、別名ハロン消火剤ともいう。
現在消火剤として認められているのはハロン1301、ハロン1211、ハロン2402、ハロン1011の4種類である。
これらは標準状態において気体又は揮発性の液体で不燃性である。その消火原理は、重い(空気の約4~9倍の重さ)不燃性の気体又は蒸気が燃焼物を被覆して窒息作用するとともに、ハロゲン元素のもつ負触媒効果(抑制効果)も著しい。ハロゲンの負触媒作用とは、燃焼の連鎖反応過程中に負触媒の働きをして、燃焼の継続を遮断するということである。

(5)粉末消火剤
かなり以前から炭酸水素ナトリウムの粉末は油火災に使用されてきたが、近年著しく開発がすすみ、現在ではABC粉末と呼ばれる万能消火剤(普通火災:A火災、油火災:B火災、電気火災:C火災のいずれのも適応)が、消火器の大半を占めるに至った。粉末消火器は粉末状消火薬剤の総称で、現在炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム系のもの(BC粉末)と、りん酸塩類系のもの(ABC粉末)に大別されている。
ABC粉末(りん酸塩類を成分とするもの)
第1りん酸アンモニウムNH4H2PO4を主成分とし、100メッシュ以上の微粉末で、吸湿性を防ぐ為、微粉末はシリコン加工が施され、また流動性をあたえるため滑剤が添加されている。
BC粉末(炭酸水素ナトリウム等を成分とするもの)
炭酸水素ナトリウムNaHCO3を主成分としたものと、炭酸水素カリウムKHCO3を主成分としたものがあり、これらの粉末(100メッシュ以上)をABC粉末と同様に無水ケイ酸やシリコンで防湿加工したものである。

(6)膨張ひる石、膨張真珠岩
ひる石、真珠石を高温処理すると含有水分が気化し、岩石が細かい気泡をもった軽石のように膨張する。これを粉末にし、シリコン加工したものが消火剤用の膨張ひる石(バーミキュライト)、膨張真珠岩(パーライト)である。
各種消火剤の一覧表

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